こんにちは! 広報室のたびちん(@takiyoro)です!
みなさんは「カスタマージャーニー」という言葉を聞いたことはありますか? マーケティング側面やUXデザインの文脈など、さまざまな視点から語られています。
良い機会なので、カスタマージャーニーとはどんなものなのか、調べまくって学んだことをお伝えしようと思います。
この記事では、カスタマージャーニーがなんなのか、またカスタマージャーニーマップとはどういうものなのかを解説しつつ、実際の業務に役立てるためのプロセスをお伝えします。
今回の記事が、いきなり「カスタマージャーニーのことをもっと考えよう」「カスタマージャーニーマップ作ってよ」などの声をかけられた方の、何らかの助けになれば嬉しいなと思います。
カスタマージャーニーとは
マーケティングにおけるカスタマージャーニーとは、タッチポイントを含む、購入までの顧客の通る体験のことを指します。これを図や文字にすることでマップ化したものが、「カスタマージャーニーマップ」と呼ばれるものです(こちらについては後述します)。
「カスタマージャーニー」単体は、顧客が受ける体験そのものを指す言葉です。
人はいきなり商品を購入するわけではなく、買いたいと思い始めるきっかけがあり、検討・比較段階を経て、やっと購入までつながります。企業側の「こう売りたい」という意図だけを出すのではなく、まさに「顧客目線で考えよう」ということですね。
カスタマージャーニー分析は、これらのような顧客行動を明らかにし、情報収集や認知した経路などのタッチポイントを列挙し、その一連の過程の思考や感情を捉えます。商材・サービスから顧客への次の一手が見えてくるのです。
カスタマージャーニー分析を進めるためには、カスタマージャーニーマップの作成が有効です。
カスタマージャーニーマップ以外に使えるダイアグラム
カスタマージャーニーマップを作る前に、その一つ上の概念をお伝えしておきます。カスタマージャーニーマップの作り方について気になる方はこの章を飛ばしていただいてかまいません。
まず、カスタマージャーニーマップはダイアグラムのうちの一つであるということを、オライリー社の『マッピングエクスペリエンス』という書籍で紹介されています。
ダイアグラムとはなんでしょうか。Wikipediaに記載している表現を引用すると、このように紹介されています。
ダイアグラム(diagram)とは、情報を整理し象徴的に線描など幾何学的に図示したものを指す。3次元の2次元への投影による視覚化も含む。
つまり、線や形などで図示されるものを総称してダイアグラムと呼ぶわけです。顧客体験を捉えるマッピングツールはカスタマージャーニーマップだけとは限らないということです。
この本では、代表的なダイアグラムとして下記の5点が紹介されています。
- サービスブループリント: サービス提供の流れを図示したもの
- カスタマージャーニーマップ: 個人が組織の顧客(利用者)として体験する事柄を図示したもの
- エクスペリエンスマップ: 所定の分野や領域における人の体験を図示したもの
- メンタルモデルダイアグラム: 人の言動・感情・動機を後半に検討するためのダイアグラム
- 空間マップ: 人の経験を空間的に表したダイアグラム
著者の方のスライドを引用すると、見た目はこのように違います
▼カスタマージャーニーマップ(プラスの感情とマイナスの感情に焦点を当てたものです。)
▼エクスペリエンスマップ
▼サービスブループリント
詳しい説明は『マッピングエクスペリエンス』を読んでください。ここで言いたいのは、体験を図面におこすということには、さまざまな手法や形があるということ。カスタマージャーニーマップのみを使うことが適切ではない場合も、往々にしてあります。
また、人によってはエクスペリエンスマップとカスタマージャーニーマップとブループリントが同じものを指している場合があります。それに加えて、まったく別のものを思い浮かべているのに「カスタマージャーニーマップ」と呼んでいる場合もあります。呼び名の混同も起きうることに留意し、認識を合わせることをおすすめします。
『マッピングエクスペリエンス』では、ダイアグラムを描くことを「マッピング」と呼んだうえで、このように記載されています。
常に念頭に置くべきなのは「マッピングの目標は、ダイアグラムを完成させることではなく、発見と理解を促して、対象となる難題に対処すること」だという点です。
なので、「カスタマージャーニーマップを描こう!」という言葉が出たら、すぐに図を書き始めるのではなく、誰の体験を図におこして、何を見たいのか(+その先にどうなりたいのか)を整理することが重要です。
顧客体験についての記述方法については、まだまだ発展途上の分野とも言えるでしょう。2018年に執筆された日本マーケティング学会での株式会社電通デジタル 亀和田 慧太さんによる論考がありましたので載せておきます。
https://www.j-mac.or.jp/oral/dtl.php?os_id=131
「マッピング」をすることによる効用
さまざまな手法があることはご紹介しましたが、これらのダイアグラムを描くこと(マッピング)には、共通する良い点があるとされているのでご紹介します。
- 共感を育てる
- 全体像が見える
- 縦割り業務を解消する
- 焦点を絞る/優先順位を決める
- チャンスを掘り起こす
よく言われているカスタマージャーニーマップのメリットと大きな相違はなさそうです。
カスタマージャーニーマップの特徴
長々とお伝えした「マッピング」のなかでも、カスタマージャーニーマップとはどういう特徴をもつのでしょうか。
カスタマージャーニーマップは商品・サービスへの消費者のモチベーションや、態度を掘り下げるツールとされており、消費者としての個人の視点・体験を時系列型に示したものです。活用目的としては、タッチポイントの分析や最適化、顧客体験の管理などが挙げられます。
顧客体験のなかでも、特定のサービスや商品に関わる事象を取り扱いたいときに利用すると良いですね。
カスタマージャーニーマップの作り方
ここでは、効果的なカスタマージャーニーマップの作成方法をお伝えします。
主担当・対象・ステークホルダーを確認
まず初めに、カスタマージャーニーマップを作成・活用する主担当を決めましょう。その後、対象のプロダクト・サービスなどを決めます。バリエーションがある場合は含めるのか、含めないのかを確認しておかないと、想定すべき事項が際限なく増えていきます。
対象が決まったら、そこに関わる社内のステークホルダー(関係者)を洗い出しましょう。営業担当やエンジニア・デザイナーをはじめ、関連するスタッフがいればいるほど、情報が集まりやすくなります。
- 初めに行うこと
-
- 主担当を決める
- 対象のプロダクト・サービスを決める
- ステークホルダー(関係者)は誰かを確認する
作り込みのレベルを決める(フォーマル・カジュアル)
マッピングの作り方としては、フォーマルとカジュアルで作り方を分けたほうがよいです。
大企業への提案など大人数が関わる場合はフォーマルな作り方がよいですし、仲間内で作る場合はカジュアルな作り方でよいでしょう。このように、どの程度の作り込みが必要かは、最終的に利用する人の期待値と人数に合わせましょう。
作り込みのレベルによって、制作時間は変わってきます。また、ワークショップ形式で実施する場合は、社内のステークホルダーのうち誰に参加してもらうかの選定が必要です。
制作するカスタマージャーニーマップの形式もここで決めましょう。大きな模造紙などでの手書きなのか、オンラインで作成できるツール(Miroなど)を使用するのか、プレゼンテーション作成ソフトで作るのか、デザイナーが使用するようなAdobe PhotoshopやAdobe Illustratorなどのソフトで最終的に作成するのかを決めます。
実ユーザーがいる状態かどうか確認
すでにユーザーがいる状態といない状態か、どちらかで用意をするものが変わってきます。いずれも作り込みのレベルに合わせ、調査・用意すべき要素を追加したり削ったりしましょう。ここで、カスタマージャーニーマップを作る目的も合わせて確認します。
実ユーザーがいない状態:思索が目的
実ユーザーがまだいないが、カスタマージャーニーマップを作りたいとなった場合は、現状のプロジェクトの方向性が間違っていないか思索する目的が主になるでしょう。同じチーム内での目線あわせも意味合いとしては大きくなるかと思われます。抜けもれなく要素を洗い出せるように進めることが大事です。その場合、下記の要素を集めることが必要です。
- プロトペルソナを描く(プロトペルソナは調査に基づかないペルソナのことを指します)
- 実プロダクト・サービスの仕様がどこまで固まっているか確認(不明な場合は、カスタマージャーニーマップを作ってもさらに変わる可能性に考慮する)
いずれの場合にしても、「想定でしかない」ということに留意します。カスタマージャーニーマップの作成終了後、一定期間をおいて、想定のカスタマージャーニーマップとどう違ったのか検証するスケジュールを入れておきましょう。
実ユーザーかいる状態:観察が目的
実ユーザーがもうすでにいる場合は、すでにあるプロダクト・サービスを観察し、改善していくことが主な目的となるでしょう。データがすでに取れる場合が多いため、目的に対して必要な程度、実態に近い状況を描き出すことが大事です。
- ユーザーインタビューを行うなど、実在する人をペルソナとして決る
- Web分析など、定量調査など揃えられるものは揃える
- 顧客への解像度を上げるため、できるだけ定性調査も行う
調べ始めると膨大なデータ量と期間になります。目的に合わせ、どこまで準備するのかスケジュールを決め、上長やプロダクトマネージャーと実施期間を確認したほうがよいかもしれません。限定的な情報でしか作成できないことに留意し、作り込みすぎず、次の施策の判断のために活用することを主眼に置きましょう。
カスタマージャーニーマップを制作する
必要な情報がそろったら、カスタマージャーニーマップを制作していきましょう。
大きなコンバージョンファネルを横軸に書き出す
今回のプロダクト・顧客が、どのような経路を辿って購買に至るかを大まかに分類し書き出します。たとえば認知・調査・選択・購入といったものです。AIDMAやAISASなどの一般的なフレームワークをつかってもよいでしょう。対象のプロダクト・サービスに合わせた経路を描くために最適な枠組みを決め、横軸に書き出します。
タッチポイントを縦軸に書き出す
上記の大きな経路ごとに、顧客とのタッチポイントが何になりそうか、列挙していきます。たとえば、Web・店頭・口コミ・雑誌広告など、現状で考え得るタッチポイントを洗い出し、縦軸に書き出していきます。
タッチポイントごとの行動変容を促す思考や行動を書き出す
縦軸と横軸が決まったら、交差するところに行動変容を促す思考や行動を書き出していきます。カスタマージャーニーマップは顧客の行動変容のポイントを知りたいために作成するものであることに留意します。
想定段階で作るカスタマージャーニーマップであれば多くの人と考えると効果的です。また観察を目的としたカスタマージャーニーマップであれば、インタビューなどの定性調査でセリフを拾ってくることがよいでしょう。定量調査は、参考情報として効果的です。該当する場所にデータやグラフを添付しましょう。
こちらのWebサイトのカスタマージャーニーマップを参考にしてください。
https://heartofthecustomer.com/customer-experience-journey-map-the-top-10-requirements/
カスタマージャーニーマップの活用方法
チームでカスタマージャーニーマップを作り始めると、盛り上がりますしいろいろな視点が入って充実したものになっていきます。しかし、カスタマージャーニーマップは作ることが目的ではなく、次の施策のヒントにすることが目的です。カスタマージャーニーマップが作成できたら、ステークホルダーとともにマップから何を読み取れるかディスカッションし、次の施策を決定しましょう。
施策の参考にするということはつまり、データやペルソナ、プロトペルソナのアップデートが重要です。1度きりの作成ということでなければですが、各情報をアップデートし再度カスタマージャーニーマップを活用する時期を決めましょう。また、カスタマージャーニーマップ作成メンバーの予定を事前におさえておくとスムーズですね。
カスタマージャーニーについて分かりづらい点
今回、カスタマージャーニーという言葉を調べていくにあたり、混乱や混同しやすいポイントがいくつかありました。簡単に列挙していきます。
いつごろから言われ始めた概念か
2010年3月ごろにはカスタマージャーニーマップの作り方が出てきていたようです。
https://experiencematters.wordpress.com/2010/03/04/its-all-about-your-customers-journey/
とはいえ、凡人の私では「カスタマージャーニー」の初出がどこなのか、わからずじまいでした……。調査を続けようと思います。
カスタマー・エクスペリエンス(CX)やユーザーエクスペリエンス(UX)との関連
UXとCXはともに隣接した概念のため、多くの言説で混乱して使用されているように見受けられました。
そのなかでも、この記事が詳しかったのでご紹介します。
CXは顧客以外も範囲にあり、UXは顧客の体験にズームインしていく概念と紹介されています。この記事では明確な違いとして提示していますが、諸説あります。それぞれのメンバーが持つCX・UXの概念は、微妙に揺らいでいるものと認識した上で、カスタマージャーニーを捉え、作成し、ディスカッションしていくことが必要です。
特に、どこからが自社のユーザーなのか、今回の対象となる人はどの範囲にあたるのかは確認しておくとよいのではと思いました。
カスタマーサクセスとの違い
カスタマーサクセスはサブスクリプションの台頭などで出てきた概念で、顧客の期待する成果を上げられるようサポートする行為のことを指します。そのため、カスタマージャーニーを正確に捉え、施策を実施することで、カスタマーサクセスが実現できると考えるとよいでしょう。
ユーザビリティとの違い
もうご存じの方にとっては明確かとは思いますが、ユーザビリティは「使いやすさ」と近い概念です。
参考:こちらのサイト
カスタマージャーニーは全体の体験そのもの、そしてユーザビリティは対象をいかに満足して使えるかの度合いと考えると良さそうです。
カスタマージャーニーを捉え、サービス・プロダクトに改善を加えていくことで、ユーザビリティの向上に寄与できる……と考えるとよいかと思います。
さいごに
新しい施策を考えるとき、ついつい感覚で動いてしまいそうになります。そんなとき、慎重に検討・観察し、どんな人でもある程度読み取れるようにしたいものです。そんなときに、カスタマージャーニーマップを効果的に使っていきたいですね。
それではまたお会いしましょう! たびちんでした〜!
